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「環境もまあまあだし・・・手ごろな広さ、手ごろな価格、よし、この土地なら買えそうだ!」と思ってはみたものの、「ん?建築条件付の土地かあ、じゃあ、こだわりの家を作るのは無理か・・・・」とがっかりする人も多いようです。「建築条件付」というと、自由設計と言いながら不動産会社のペースに乗せられ、結局、建売住宅と同じ、むしろ、どんな仕上がりになるか事前に自分の目で確かめられないので、余計始末が悪い、と敬遠されるようです。

ですが、気に入った土地はそうそうあるものではありませんし、「この土地で何とかしたい!」の何とかを実現した、Yさんの奮戦記をご紹介しましょう。

平成14年2月5日(火)
前日の夜、知人のYさんより電話があり、土地を買いたいと思うが相談にのって欲しいと訪ねて来ました。

共働きのYさんは、夫婦共に仕事が忙しいこともあり、つい、妻の実家に4歳の子供を預けっぱなしにすることもしばしば。自宅と実家は車で一時間以上かかるので、2〜3日、子供の顔を見ないことも・・・・。子供も4歳になり、教育上もよくないので、妻の実家の近くに引っ越すことを考えて、賃貸マンションを探していたとのことです。ですが、駅から近いこともあり、子供が高校生になるまで10年間賃貸マンションに住むとして、その家賃がおよそ1800万円!現在が持ち家住まいですので、後に何も残らないものに1800万円払うのがどうなのか?!と思っていたところ、実家のすぐ近くに土地の売り出しが出た、というのです。ですが、半端な土地で24坪、北道路、間口6mで南北に長い土地という、あまり良いとはいえない条件の上、建築条件付の土地(不動産屋が設計・施工して分譲住宅として引き渡すもの)です。

ですが、とにかく、実家から歩いて2分!というのがなんといっても魅力なのです。ですが、住まいにこだわりを持つYさんは、どんな家でもいい、というわけでもありません。そこで、Yさんは、この土地にどんな家が建つのか?日当たりが悪そうだがどうしたら?と、相談にやって来たわけです。

資金は土地と建物を入れて4000万円以内で、との希望ですので、建物にかけられるお金は1800万円程度です。予算も少ないし、家族も3人だけなので、部屋数はLDKの他に寝室と子供部屋があればよい、とのこと。が、とにかく、リビングは広く、楽しく作って欲しいと、とてもはっきりした要望を残して、帰られました。

平成14年2月6日(水) 現地調査
早速、土地を見に行きました。とにかく、基本設計に入る前に敷地を実際見ることが一番大切です。廻りの環境や、土地のイメージから、プランが湧いてくるのです。

平成14年2月9日(土) Yさん来所
とにかく、早く引っ越したい!というYさん家族に、急いで2つプランをつくり、日当たりが悪いので、2階にLDKを持っていくことを提案しました。

2案のうちA案は、より南側の日当たりを良くしたいので、車庫を建物の一部に組みこんだスキップフロアのプランで、最上階の子供室は斜め天井のロフト部屋です。

もう一方のB案は、通常の2階建てプランです。
 
延床面積はほぼ同じですが、スキップフロア構造の分、A案の方が建築費がかかりそうなことを説明し、A案の方が、階段を半階上ることに、家の景色が変化するので楽しいですよ!とお勧めしました。LDKもA案は18帖近くあり、勾配天井なので、広がりもあります。Yさんも、A案を大変気に入ってくださり、次週末、不動産屋との打ち合わせに設計者もオブザーバーとして立ち合って欲しいとのことでしたので、了解しました。

平成14年2月16日(土) 不動産屋との交渉
G不動産の担当者と会い、まず、「条件付」をはずしてもらえないか?と交渉するも、「建物とセットでなければ、土地は売れません!」の一点張りなので、「設計事務所を入れて自由設計をさせてもらえないか?」と再交渉。その際、設計事務所側からの最低条件として、

  ・設計者が作成する図面に基づいて、詳細の見積書を提出した上で、建物工事契約すること。
  ・現場管理は設計者にさせること。


の2点を納得してもらうのに、約2時間。とにかく、最初の「工事詳細見積書を出す」という点が受け付けてもらえません。何故か?通常の条件付の契約の仕方としては、「このプランなら建物30坪なので1600万円です」と言った具合に、最初に坪○○万円という数字ありきで、まったくのどんぶり勘定です。事前に工事価格が把握できていないわけですから、実際より高い金額で契約になっても不思議はありません。

不動産屋の担当者は、「早く平面図をください」とさかんに言っていましたが、平面図(プラン図)だけでは、見積などできるはずはないのです。設計者は断面で間取りを考えていますから、平面図だけでは意図するところを表現できません。お施主さんの希望を取り入れながら、ショールームを廻ったり、材料を決めたり、設計打ち合わせに通常3ヶ月から半年かかります。但し、今回はとにかく施主が急ぎたいということでしたので、4月4日に見積のための図面を不動産屋に渡すことを約しました。

「建築条件付の土地」は建物の工事契約が成立してはじめて売買可能になるものと法律で決まっています。Yさんはとりあえず、土地の契約だけはして手付金を支払いましたが、万が一、建物の工事見積がどうしても合わず決裂した場合には、土地の契約も白紙に戻すことができ、手付金は戻ってきますのでリスクはありません。設計内容を縛られるようなことはなく、とにかく、Yさんの予算の範囲で自由にやりたいことをやれます。ただし、見積が決裂した場合には、土地も手に入らないわけですから、設計図は何の役にも立たなくなってしまいますので、決裂した場合には、設計料の半分を支払っていただくことで、Yさんと設計契約を結びました。

平成14年4月4日(木) 不動産屋に図渡し
2ヶ月間、ほぼ毎週末Yさんと打ち合わせを重ね、キッチンやユニットバスのショールームに行ったりと忙しい日々でしたが、通常の設計手順を端折ることなく、満足のいく話し合いができました。図面の枚数は約35枚。今回はとくに、詳細見積を出すのが初めて、という相手なので、細かい材料の選定・書き込みに落としがないよう、いつも以上に気を使いました。

また、通常、見積期間として2週間取るのですが、今回は特別長く3週間として4月25日に見積書提出するように依頼しました。

平成14年4月25日(木) 詳細見積書受け取り
見積書の内容は大変しっかりしており満足のいくものでしたが、何と!予算500万円オーバー。さすがに、Yさんはしょげておりましたが、ざっと内容を見直したところ、拾い間違いやかなり単価の高い項目もあり、少し設計変更をすれば、簡単ではないが何とか調整できるとの感触でした。

アルミサッシ・輸入建具・ユニットバス工事等、既製品でカタログ上金額が明らかなものは、施主に直接購入してもらって約100万円削減。まったく同じ工業製品でで、中間マージンをカットしたでけです。その分、設計者の手間は増えますが、比較的手離れのよい工事項目なので、それほど負担ではありません。

その他単価の調整をし、また、フローリングとタイルのメーカー指定をはずして、不動産屋で通常使用していて安く入るものに設計変更しました。変更の際はもちろん、設計のイメージに合うものかどうか?物を確認します。Yさんにも見てもらってOKをもらいました。

Yさんにまず、見積内容を説明して、変更を検討して、不動産屋と交渉して、もう一度、金額をYさんと煮詰めて、この一連の調整に約2週間。

平成14年5月11日(土) 建物工事契約
ほぼ、設計側からの修正金額に応じてもらい、最終金額の決定にYさんと不動産屋訪問。本来でしたら、ここでもう一度、修正後の詳細見積書を作成してもらい、それを契約書に添付するのが通常のやり方ですが、「これ以上、詳細見積を出すのは勘弁してくれ」と先方に言われ(要は、事前に物事の値段を詰めるのが苦手ということですね。笑)、工事契約書に「設計図書通りに施工すること」という一筆を入れてもらうことを条件に了承しました。現場が始まっていざという時には、「図面に書いてある通りにやって」と頑張るつもりです(笑)。

結局、Yさんにしてみれば何かをあきらめたとか、大きな変更をすることもなく、ほぼ予定通りの金額で契約をすることができました(最初の見積金額より450万円減に成功)。「見積書の数字は細かくて、とても素人では交渉できないですね。きっと、相手の言いなりになるしかなかったと思います。設計者は、建物をデザインするだけではなく、こんな細かい交渉もしてくれるとは思いませんでした。本当に助かります。」と言ってくださったYさん。

平成14年5月16日(木)
とにかく早く引越したいということなので、契約の5日後には工事着工という超ハードスケジュールになりました。不動産屋さんの方も協力してくれ、9月末までには引き渡しができるだろうとのこと。工事工定表通りに行けば、9月10日には竣工予定です。

設計事務所と組んで現場を仕上げたことがなく、不動産屋の営業マンが現場監督を兼任しているという話でしたので、設計者が週に1回現場に通って現場監理することにしました。木造の住宅の現場では、週一回の定例会方式はめずらしく、必要な時だけ監督と打ち合わせるというのが通常ですが、今回はきっちりやりたいと思っています。


ほぼ予定通りに工事は終わり、駄目直し工事もきっちりやってもらい無事引越しとなりました。竣工写真はこちら

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