停年を迎え、東京から故郷の石川県・能登半島、志賀町へUターンするために終の棲家としてリフォームした事例です。

平成19年3月に能登半島・輪島市を中心に大きな地震のあったことは記憶に新しいかと思います。
志賀町は、その輪島市の隣にあり、この住宅は地震の半年前に竣工しました。

約80坪という大規模な全面リフォームだったこともあり、「地震対策として壁の補強をしましょうか?」
とご主人に相談したところ、「このあたりは地震なんかまったくないところだから、地震対策なんて必要ありませんよ!」と言われました。

「あ、そうですか」とたいした疑問もなく設計がスタートしたわけですが、あの阪神大震災もそうだったようにそれまで地震のおきなかった地域が突如として大地震に見舞われる、日本中どこで大地震がおきても不思議はない、だから、できるときに(特にリフォームはその良いチャンス)耐震補強はしておかねば、と肝に命じた事例となりました。

元が商家だったため、1階既存店舗部分の間口がかなり大きく、構造的な不安があったので住宅として住みやすいプランに変更する際、柱や壁が増えるように意識して設計はしていました。ですが、既存の基礎や壁・柱・梁の補強は特に手を加えたわけではなかったので・・・正直、地震のニュースには冷や汗でした。

幸い、庭の灯篭が倒れた他、屋根の瓦が2〜3枚落ちたのと、階段の内壁にひびが入った程度ですみました。そうして、商家は二世帯住宅として生まれ変わり、長女家族との新しい生活が始まっています。



リフォーム前外観 
リフォーム後外観

屋根瓦は数年前に取り替えたばかりだったので、既存のまま手を加えていません。
商家だったため南側の出入り口が大きく開放されていましたが、居間にしつらえたので、腰窓にして落ち着きを。
両側とも窓だったコーナー部分には、壁をつくり筋交いを入れて構造的な補強がしてあります。
窓サッシはすべて交換、外壁はこの地方でよく見かけられる下見板を張り、周囲の風景に馴染ませました。
2階の角に小窓を新設しました。ここは、元押入れ部分が子供の勉強コーナーになっています。

リフォーム後玄関   
既存は商家だったため、玄関がありませんでした。下見板にマッチした庇をあつらえ、住宅らしい構えに。
近所では「高級旅館でも始めるのか?!」と話題になったそう(笑)。


リフォーム後リビング(元は店舗だったところ)
黒光りしている部分は既存、白木の部分は新らしくあつらえた部分。
床はヒノキの縁甲板張、壁は珪藻土塗り、窓はカーテンではなく障子で。
既存の木部分と喧嘩しないように自然素材で仕上げた。
エコキュートによる床暖房敷設。


新しい玄関
正面奥がリビング。
式台を設けて段差を小さく。



居間の一角の書斎コーナー

 


リフォーム前茶の間からキッチンを見る リフォーム後キッチン
西側にあって西日に困っていたキッチンを東側へ移動。黒光りしている長押は既存のまま。
既存のキッチン部分には、西日が嬉しい浴室へ。
巾2.6メートル、高さ2メートルの作りつけの食器棚。半透明の引き戸でこれなら二世帯分の食器も一目瞭然。
作りつけの食器棚のおかげで、大地震にも食器には被害なし。


リフォーム後洗面
オリジナルの鏡の裏に照明を仕込んだり、渋緑色のモザイクタイルを張ったり。
家全体の和風の雰囲気をこわさないように遊んで、気持ち良く使う。



<2階は長女家族のプライベートルーム>

既存6帖の和室が4部屋だったところを、10帖の居間+6帖の寝室+6帖の子供室へリフォーム。
また、押入や床の間を統廃合?して、家事コーナーとウォークインクロゼット2帖を捻出。
さらに、階段の吹き抜け部分に一部床を作り、トイレと洗面コーナーも捻出。
子世帯にキッチンはありませんが、水廻りもあり、冷蔵庫置き場もつくり、子世帯だけでくつろげるよう配慮しました。


↑リビングに面した洗面コーナー(左)と右奥家事コーナー(冷蔵庫・ポット置場)


2階リフォーム前 リフォーム後
既存和室の天井高さは2.2mしかありませんでした。「外観の屋根はあんなに高いのに、天井がこんなに低いのは何故なんだ?!」と不思議に思っていましたら、屋根を支える大梁が低い位置にかかっていたのでした。「この梁はどう処理するのか?」と現場から電話があり、急遽、埼玉から現地へ赴くことに。建て主さんにも一緒に現場に立ち会ってもらい解決策をさぐりました。

梁は丸太状で傷だらけ。おまけにマジックで墨だしの文字などが書かれていましたが、

「今どきの新築の家では、こんな大きな丸太は使えませんし、思い切って梁を見せましょう!」
「傷も愛嬌のうち。リフォームの醍醐味と割り切って。文字は塗装をかければ気にならないでしょう」
「この丸太を隠そうと思うと天井が低くなりますし、逆に丸太を見せれば勾配天井が作れて、天井が高くなり広々感が違いますよ」とご提案。

建て主さんは、少し戸惑ったようでしたが、提案を受け入れていただき、民家風の素敵な居間になりました。
往復8時間かけて現地へ飛んで行った甲斐がありました。


2階リフォーム後  階段吹き抜け
洗面コーナーとトイレは既存階段部分に張り出して作ったため外気に面した窓がとれませんでした。
そこで、明り取りと通風のため、障子の窓。それが、階段室を楽しい雰囲気に。
1階と同じく、白木の部分は新しいもの、こげ茶の部分は既存(天井も)。