施工:丸和工業(株)



真ん中に廊下をはさんで、一番条件の良い南側に広縁と二間続きの和室。そして、一番条件の悪い北側に台所と食堂。

一昔前に建てられた日本の伝統的な間取りで、敷地の広い郊外住宅によく見られます。あなたの廻りにも良く見かけませんか?
まだ、冷蔵庫やガス・電気、上下水道が調っていなかった江戸時代以前の伝統が息づいているのでしょうか、
腐りやすいものがある台所、水や火を使う台所は北側に、という考え方。それとも、嫁は裏で働け、ってこと?!
そして、めったに使わない応接間的な和室は一番見栄えの良いところに!しかも、冠婚葬祭ができるように?ニ間続きです。

しかしながら、時が移って現代生活では、「食べること」「だんらん」が一番の重要事項となりました。
すると必然的に、居心地の良い南側に家族の生活は移っていきます。ですが、台所の位置はそのまま。
すると、北側の暗く寒い台所で調理をし(誰が?)、南側の和室まで運んで食事。食事が終われば、また運んで後片付け。
なんて、効率が悪いんでしょう。「あ〜、使いづらいわ」ということになります。


リフォーム前
   既存:和室6帖(床の間+書院)x和室6帖(押入れ2間)+広縁


2間続きの和室の既存写真。リフォームのヒントはいつでも、既存にあります。現地調査をさせてもらった瞬間、LDKと和室を南北に入れ替える設計方針を決めました。6帖2間分と、押入・床の間のスペース計4帖分、それに広縁分を合計すると、20帖以上のLDKを作ることができると判断したからです。次に、既存の構造の柱をうまく生かすプランを考えなければなりません。その時の最大のヒントになったのが、右写真にある既存の天井です。今ではほとんど見られない、無垢板の棹天井です。本物は、時間が経てば経つほど味わいが出てきて魅力が増します。逆に言えば、どんなに高級な無垢の材料を使っても、新築では、このような味わいのある仕上がりにはならないのです。それだけ、貴重なものという事ですね。これを生かさない手はない!と判断し、和風の洋間「大正浪漫風」にデザインしようと提案しました。時代がたって、良い具合に飴色に焼けた柱や長押・鴨居は最大限に生かし、新らしくする部分とのミスマッチを楽しめるような空間をめざしました。

リフォーム後

 黒っぽく見える柱や長押はすべて既存のままです。白く見える木部が新しくした部分(天井の見切や鴨居など)。扉も新しくデザインし直して交換しました。違和感は無いと思いますが、どうでしょう?工事開始当初は、大工さんに設計の意図を理解してもらえず、「古いものは、上から新ものをかぶせてしまえ!」(ビニルクロスを貼るなど)と、いきなり、現場で衝突。幸い、建て主さんが、設計の意図をとても良く理解してくださっていたので、大きな混乱もなく、大工さんには何度も説明をして、納得してもらって工事を続けることができました。設計段階での、建て主さんとの話し合いの大切さを実感した現場でもありました。
 壁は珪藻土を新たに塗り直しています。右側の収納部分がもと2間の押入れだった部分。奥の正面の壁だけ、少し色気を出したかったので、和紙を貼っています。
 また、左側の絵のかかっている壁の反対側はキッチンになっています。LDKが広いのは嬉しいことですが、どうしても散らかしがちになってしまうキッチンがあまりにもオープンなのも、また、落ち着かないものです。そこで、長押の高さまで、間仕切りの壁をあえて立てました(天井までではないところが圧迫感を出さないポイント)。もちろん、奥様の趣味の陶芸作品を飾る棚を作ることを意図してのことです!ここの正面の壁も和紙貼。地元の和紙の産地まで、建て主さんと一緒に和紙を買い付けに行きました。こんなちょっとした工夫も、家づくりの楽しさひとつですね。家への愛着が増します。


 天井の色が変わっているところが、元広縁だったところ。その一角を利用して、ご主人のための書斎ココーナーを設置。現代生活にパソコンは不可欠な道具となりました。その置き場所の確保も大事です。散らかっても気にならない死角になるところで、しかも、誰でもが使いやすい場所。壁には、小さいですが、作りつけの本棚も作りました。窓には、カーテンではなく、障子を入れて、全体の調和をはかりました。


 間仕切り壁越しに、キッチン方向を見る。リビングに近いキッチンは便利ですが、リビングののくつろぎを壊さないように配慮をしたいものです。


リフォーム後、もとキッチンだったところが、みごとに和室に変身。リフォームの醍醐味はこんな意外性にあります。窓のデザインを変えただけで、こんなに印象が変わるなんて!「そう言えば、北側に、こんなにおあつらえ向きの竹が植わっていましたね」と、建て主さんも苦笑い。
リフォーム前北側キッチン




オマケ:玄関に趣味の陶芸作品をディスプレイする専用家具を特注。生活を楽しむリフォームをしましょう!